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大家具子さん インタビュー

ないから、作る。

​生活を楽しむ中から溢れ出る道具たち

​【後編】

​聞き手 ヨリフネ・船寄真利

ガラス作家の大家具子(おおや・ともこ)さん。

ヨリフネで初めて、個展を開催してくださることになりました。

 

大家さんのつくるガラスの作品たちは、「他にはないデザイン」なのに、「生活のなかで、すごく使いやすい」という、リアルなニーズを満たしてくれる魅力を持っています。

 

一見、相反しそうなその2つの特徴は、どうして大家さんの作品のなかでこんなにも自然に融合しているんだろう?

 

そんな彼女の作品づくりのひみつを知りたくて、じっくり、お話をうかがいました。

 

 

取材・文:船寄真利

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大家具子


兵庫県出身。高校生のとき、趣味でガラスをはじめる。

大学で工芸を学び、宙吹きガラス作品を制作。

2016年には鳥取県倉吉市にて、アトリエショップsaonをオープン。

2024年1月に自身の工房を構える。


instagram ▶︎ @goocoglass

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ないと自分が困る

——大家さんの道具は、他にない、らしさに溢れたものという印象です。個性と、道具としての使いやすさってバランスを取るのが難しいと思うんですけど、大家さんの道具は使いやすかったり、「なかったけど確かに…」っていう隙間のニーズを突いてくるって思うことが多くて。それぞれの作品の背景など聞きたいです。

 

大家:「個性」についてはね、そもそも、自分がいいなと思った形を追求しつづけているだけで。だから、自分では何が個性かわからないんだけど...。

——たとえば、「ichirin」*はまさにそういう作品だと思うんです。このサイズ感の花器に入る花って限られてくるかと思いきや、いけるときの下処理でとっちゃったお花とか、茎が折れちゃったけど花はまだ綺麗なのとか、結構使う場面が多くてすごく便利!でも、なかなか最初から「これを作ろう」とは思いつかない気がして。

*上記画像左から1.3.4番目

 

大家:あれは、もともとワイングラスの失敗から出来たもの。最後のカップ部分を失敗しちゃったんだけど、足の部分を気に入っていたかなんかで、捨てたくなくて。だから、カップ部分をうんと小さくしたワイングラスみたいなものにしたの。それにパンジーを入れて、お店に飾っていた。

​​

——パンジーの茎って短いから、ぴったりですね。

大家:家で育てたお花って、お店で売っているみたいに全ての茎が長く綺麗なものばかりじゃないでしょう?一般的なバランスの花器だと倒れちゃう。使ってみると、このカップのサイズ感がめちゃくちゃ使いやすくて。お客さんからも「これ欲しいです」って言われることがすごく多かったんだけど、ずっと断っていた。かと言って、これをもう1回作ろうっていう気にもならなかった。

——評判がよかったのに、作らなかったんですか。

大家:用途も限定的だし、「花器」って言って販売するのはピンとこなくて。こんなの好きなのは多分私だけで、いいって言ってくれる人はいたけど、ごく少人数だと思っていた。

​​

——もともと偶然から生まれてますしね。

大家:それもあるかも。ただ、ひょんなことから手放してしまったら、自分自身がめちゃくちゃ不便で困ってん。それで結局、作品として作ることにした。「世の中にないから、作ろう」というのが制作の原動力になっているから、自分の作品って「ないと自分が困るもの」なんよな。

​​​​

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yasou

——なるほど、そうだったんですね。ちなみに、こちらの花器も個性的な形だと私は思っているんですが‥‥。上の部分が、かなり大きい。幾何学的でモダンな印象です。

大家:それは「yasou」っていう名前でその通り、野草を活けるために作った花器。野生の植物って、ワイルドに全然違う方向を向いてるものが多いでしょ? 普通の花器にいけようと思うと、花が変な方をむいたままバランスが取れなかったりする。それを支えるために、上部を長くしてるの。

——もしかしてそれって、鳥取で暮らすことになったからこその気づきじゃないですか? そこら中にワイルドで格好良い草が生えているから。私も鳥取に住んでいたとき、家の前に野葡萄が生えていてテンションが上がりました。

大家:そうそう。お花屋さんも少ないし、そのへんに生えてる草のほうがよっぽど魅力的だったりする。私はそもそも雑草がないところで生まれ育ったから、雑草の概念がなくて。ただ素敵やなと思ってお店に飾っていたら、お客さんが「なんでこんな雑草いけてるの?」ってきょとんとしていた(笑)。

——たしかに、地元の人からしたら不思議かもしれませんね(笑)。

 

大家:花のいけ方のルールは知らないし、きちんと習いに行くつもりもない。自己流で「私がかっこいいと思う形」があってそれを楽しんでいる。それに合うようにつくっているから、あまりない形って思われるのかもね。

​​

——大家さんがつくるアイテムが、ご自身の暮らしや価値観とダイレクトに結びついているということが、よく分かりました。保存瓶をよく作られるのも、ふだんからおうちで酵素シロップを作られているからですよね?

大家:そうそう。酵素シロップもだし、梅干しもつけるから梅酢もいっぱい出る。大きいやつは冷蔵庫のポケットに、小さいのは棚に仕舞えるサイズに作ってる。それも、私の生活にないと困るもの。

​​

——そうか。きっと「なぜ作るのか」目的がはっきり決まっているから道具として使いやすいんでしょうね。

​​

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副産物としての作品

——私、以前大家さんからお聞きして、すごく心に残っている話があって。フリマで、おじさんに話しかけられたという‥‥。

大家:あれな。学生のときに友達と出たマーケットで作った作品を販売していたら、通りかかったおじさんに「あんたらが生活を楽しんだ後の残りものやな」みたいなことを言われた話。

——人によっては悪口に捉えるかもしれないんですけど、なんか、言い得て妙だなって(笑)。

大家:その場にいた全員、納得してたよ(笑)。実際、悪い意味じゃなくて、おじさんは「副産物」っていう意味で言ったんだろうなと思う。私たちが、ここの角はどうやったら理想の形になるやろうとか、一生懸命頑張った日々がメインで、出来上がったものはその「楽しい日々の副産物」なんやって。おじさんは「あんたらは楽しい時間を過ごしているんやな」って、言いたかったんやと思う。

——「副産物」っていい表現ですよね。その話を聞いて大家さんの作品に対して思っていた印象が、一気に言語化されてクリアになったんです。もちろん、学生のその時と、仕事として制作している今とでは状況は違うんですけど、この言葉は今の大家さんの作品にも当てはまるんじゃないかって。

​​

大家:出来上がったものじゃなくて、作る時間がメインってこと。

​​

——もう少し広い範囲での時間になるんですけども。大家さんの作品は、大家さんの生活と深く結びついていますよね。梅を収穫して梅干し作ったり、お店の中庭に咲いた花を飾ったり。そういう日々があるから、保存瓶やyasouの花器が出来ているじゃないですか。「生活を楽しむ日々」がまず先にあって、その副産物として出てきたものが、作品として世に出ているんだなって。

大家:確かに制作の中で、「こういうのが欲しいな」って考えて作ってる時間がいちばん楽しいかな。ガラス作品を作ってるっていうより、それを使って過ごす時間の方を作っているのかもしれないね。

​​

​​

生活を楽しむ中で、副産物として生まれる道具。

それはすごく自然な流れで、道具のあるべき姿じゃないかと思います。

ヨリフネがものを選ぶ上で大切にしているのが

「自分自身の中からでてきたものを形にしていること」

「リアルな日々の中で使いやすいこと」

なのですが、大家さんに話を聞くほど

そうそう、私はこういうものを扱いたいんだと強く感じました。

​初めての個展、少しでも多くの方にご覧いただけますように。

たくさんのアイテムをご紹介できることを楽しみにしています。

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