top of page
DSC09398のコピー.JPG

wica grocery 折原陽子さん インタビュー

帽子を通して出会ったひとりの職人

ーーその技術・人生を伝え続けたい

​聞き手・文 ヨリフネ・船寄真利

旅する帽子屋、wica groceryの折原陽子さん。

毎年、麦わら帽子のシーズンになると、全国各地を駆け回る。実は彼女自身は帽子職人ではないし、デザインの勉強をしたわけでもない。扱う帽子を作っているのは埼玉県春日部市で140年にわたり麦わら帽子を作り続けている田中帽子店だ。「こんな帽子は作れないか」とイメージを共有しながら、主に会長の田中行雄さんと対話を重ね、二人三脚で帽子作りに取り組んでいる。なぜ、彼女は帽子屋になったのか。彼女の扱う帽子の魅力とは何なのか。気になって話を聞いてみた。

 

編集:船寄洋之

photo : 船寄真利

新しいものを、生み出すこと

——今年の新作について教えていただけますか。

折原:まずは、折り畳める「アバカハット」に新しいカラーが加わりました。「黒だとちょっと強過ぎる」と感じる方もいらっしゃったので、より使いやすくて柔らかい印象のグレーにしました。アバカって、それぞれの人が持つキャラクターによってかぶり方の印象も違うので、それがすごく面白い。人によって見え方が変わるって、可能性を感じられるアイテムのひとつだと思いますね。

——サイズによっても印象が違って、同じものでもエレガントになる人もいれば、カジュアルにかぶる人もいて、そこが面白いと思います。

折原:もうひとつは、「アサユ」という名前の帽子です。とにかく「折りたためるものが重宝する」というお客さまの声が多くって、それに応えるかたちで作りました。

 

 

新作の"アサユ"

——折り畳めるんですか!? デッドストックの素材かと思っていたので驚きました。

*デッドストックは繊細なものが多いため

折原:そう、デッドストックなの。だから幅や高さの感じがそれぞれ少しずつ違うんです。これまでは、しっかり糊づけしてパリッとさせて、クラシックなスタイルに仕上げていたんですが、もう少しラフな印象でwica groceryらしい帽子ができないかなと考えて。アウトドアみたいなところに気軽にかぶって行くこともできるけど、布のカジュアルなサンハットよりは、もう少し上品な印象のものを作りたかったんです。

シルクコードをすごく細くしたり、パーツをマットな大人っぽい印象のものにしたり、細かいところまでこだわって作っていて、カジュアルなものであっても、全体的には大人っぽく仕上げてwica groceryらしさからは外れないようにしています。

——ラフだけど可愛さもあって、すごく素敵です。しかも、デッドストックの素材ということは、その時々でどんなバランスのものに出会えるかが変わるんですね。それも特別感があって、キュンとします。でも、ということは……素材がなくなれば、もう作れないってことですよね?

折原そう。ある程度、まとまった素材が手に入ったときしか作れないです。

新作とは言っても、アサユは今年の新作として作ったというより、数年にわたってデッドストックの素材を使って、こういう印象のものを作りたくて、試作を繰り返していたの。何度も「何か違う」ってやり直してもらったから、正直、諦めかけていて。wicaは、毎年必ず新作を出そうとは思っていなくて、良いものができなかったら無理に出さないんです。でも、折り畳めるアバカハットが2年前に初めて完成して、それで少しヒントが見えてきました。もう少しやってみようと思っていろいろ探ってみたら、やっと納得のいく仕上がりになり、今年お披露目できるようになりました

 

——買う側からすると、そこまでこだわって、本当に良いと思ったものしか出さないものづくりをしてくれているのは、信頼できるし嬉しいです。

折原やっぱり、そこまで情熱をかけた分、お客様の反応にもちゃんと表れます。売上に繋がることももちろん大事かもしれないけど、やっぱり「喜んでもらえる」という感覚をお客様からもらえるから、そのこだわりは大事にしていることなのかもしれない。と言いつつ、結果そうなってるだけ。私は納得できないことは動けないから、意識しているわけではなくて、そんな不器用な作り方しかできないんです。


——それが会長の職人魂と呼応しているように感じます。価値観が似ているからこそ、お互いを刺激し合い、高めていけるのではないでしょうか。そうじゃないと、テレパシーみたいなあの帽子の作り方は出来ないから(笑)。

折原:そうだね。この感じでお仕事ができるっていうのは、運命の出会いだと思ってます。

おわり

インタビュー一覧

衝撃の出会い

工房に行けば、
デザインがそこに
ある

DSC01658.JPG

素晴らしい
職人の技術を
伝え続けたい

DSC09404のコピー.JPG

帽子はあっても
なくてもいい。
そこに感じた可能性

DSC09399のコピー.JPG

新しいものを、
生み出すこと

DSC09405のコピー.JPG

折原 陽子

wica grocery ディレクター

バンタンデザイン研究所にてバイイングを学び、自身のセレクトショップLamp,yuzuriを経て2015年にオリジナルブランドwica groceryをスタート。デザイン性と道具性のバランスを大切にしながら、地元の職人と共に「手直しをしながら育てていく帽子づくり」を行っている。

ブランドディレクターの顔の他、結婚・出産を経てその方らしく生きていくライフスタイルの提案や、スタイリング提案など活動の場を広げている。

 

​Instagram : https://www.instagram.com/wicagrocery/?locale=ja_JP

DSC09398のコピー.JPG

​​wica grocery 帽子展

2025年 5月24日(土)〜 5月31日(土)

o p e n : 1 2 : 0 0 - 1 7 : 0 0

期間中休 27日(火),28日(水)

会場:器とギャラリー・ヨリフネ

神奈川県横浜市神奈川区松本町3−22−2 ザ・ナカヤ101

器とギャラリー・ヨリフネ

横浜市神奈川区松本町3-22-2 ザ・ナカヤ101
Open : 12:00 - 17:00
Close :
不定休

Copyright ©器とギャラリー・ヨリフネ All Rights Reserved.  

許可なく当サイトに掲載されている文書・画像等を無断使用・複製・転載することを禁止します。

bottom of page